合唱団コルス・フローレス
第14回定期演奏会 プログラムノート
第1部 無伴奏宗教曲
ウィリアム・バード(c.1543-1623)はイギリス音楽の父と称される、イギリス史上最大の作曲家です。作品は合唱曲以外にも鍵盤楽器の為の曲や弦楽器の為の曲等、室内楽作品もあります。
ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ(c.1525-1594)は16世紀イタリアルネサンス最大の作曲家です。「パレストリーナ」はレオナルド・ダビンチと同じくその出生地にちなんでつけられたものです。彼は、70曲以上のミサ曲を始めとして、膨大な数の宗教曲作品を残していますが、そのいずれもが、なめらかな旋律と、美しいハーモニーにおいて比類が無く、音楽上の聖人の様に言われています。
ポリフォニーの様式を継承しつつ、その調和のとれた美の世界に劇的な表現力を盛り込んでいった彼らの作品には、すでにバロック芸術の要素も多分に見出せるでしょう。
第2部 混声合唱組曲「光る砂漠」
この組曲は、若くしてこの世を去らなければならなかった詩人・矢澤宰の遺稿詩集「光る砂漠」の詩に基づく混声合唱とピアノのための作品で、1971年度文化庁主催の芸術祭参加作品として発表され、当時大きな注目を集めました。全9曲がいくつかのモチーフで有機的に絡み合って構築され、全曲を演奏するのに35分前後を要する大作です。
この曲のモチーフの分析をしていきますと、ずいぶん奥の深いことが隠されているようです。例えば冒頭の「誰もいない」のフレーズは、アルカデルトのアヴェ・マリーアの最初の音型を背後から読んだものになっています。
しかし、この曲を理解するには、そういった音楽的な構成もさることながら、矢澤宰について知っておくことがより大切ではないかと思います。昭和19年に中国大陸で生まれますが、8歳で腎結核に冒され、「死んだらいいということしか頭になかった」というほどの苦悩の中、21年の生涯の大半を病院で過ごしながら、多くの素晴らしい詩を残した詩人です。
矢澤宰の詩の本領は、言葉の抑揚の鮮麗さにあると共に、その短い人生の中の体験が生々しい響きを持って私達に何かを訴えかけてくるところにあります。
そして、これらの言葉が、楽譜のかたち、音楽の響きとして綴られた時、日本語の響きの変幻と彩りを主体とする合唱と、これに対比するピアノの音色が描き出す背景効果で、不思議な融合を示す作品が生まれました。
この音楽は決して平易ではありません。まして私達は、絶壁を登ろうとするような困難な技術と異常な緊張を要求されます。
特に出版の当初、「このようなピアノの伴奏を弾くことができるピアニストがいるだろうか、ピアノの伴奏は伴奏らしくもっとやさしく書いてもらいたい」と出版担当者から苦情を言われたという逸話が残されています。にもかかわらず、発表以来今日まで、この曲は沢山の日本の合唱団により演奏されてきました。合唱を志す者にとって一度は挑戦してみたい名曲だからに相違ないでしょう。
当団では、7年前の第8回定期演奏会で1度演奏をしています。技術的な要素はもちろん、詩の解釈も難しい曲ですが、矢澤宰の魂が大自然に還っていく様に共感しつつ歌います。
第3部 歌い継ぎたい日本の歌 そのT
○朧月夜…大正3年、『尋常小学唱歌(六)』に発表されました。「さとわ(里曲)」とは、お里のあたり、という意味です。
○この道…この歌が童謡雑誌の『赤い鳥』に発表されたのは、大正15年の8月号で、実は北原白秋は、その前の年に歌人の吉植庄亮とともに北海道、樺太などに長期の旅をしています。
○からたちの花…大正12年に北原白秋が『赤い鳥』に発表した詩に、14年、山田耕筰が曲をつけて藤原義江が歌って大ヒットしました。北原白秋のこの詩の「咲いたよ」等の「よ」は話し掛け言葉ですが、山田耕筰をして「白秋の詩には音楽がある」と言わしめることになりました。
○夏は来ぬ…万葉集の研究者で歌人であった佐々木信綱が古歌からとった言葉を小山作之助が巧みに紡ぎ合わせ作曲しました。卯の花はウツギの花、棟はセンダンのことです。
○七夕さま…国民学校教科書『うたのえほん(下)』に昭和16年に挿絵入りで掲載された唱歌で、5色の短冊で飾られた七夕竹が星空の見える軸の端に立て掛けられているシーンを美しく捉えています。
○風…大正10年4月『赤い鳥』に発表されました。原詩はイギリスの女流詩人クリスティーナ・ロセッティ(1830-1894)です。風は誰にも見ることはできませんが、風の働きは見ることができます。シンプルですが大変余韻が深く残る詩です。
○ずいずいずっころばし…この歌の歌詞は、いろいろ説がありますが、一般的にはお茶壺行列あるいは大名行列通過の時の警戒・戒めの歌と言われています。
○黄金虫…大正11年、雑誌「金の塔」に発表されました。作者の野口雨情は茨城県の名門旧家に生まれましたが、父を亡くして以後は経済的にも苦しい生活となり、屋敷内の土蔵が崩れ落ちても修理もできず、蔵は解体され売られていきます。借金のため知人を訪ねた折りに、道端で黄金虫を見つけ、子供に水飴すら買ってやれない自分の不甲斐無さを唄ったそうです。
○ふるさと…唱歌の傑作で、卒業式のスタンダード・ナンバーでもあります。「兎を追う」とは、単に野山で兎と遊ぶことではなく、兎を狩ることです。つまり表向きは肉食を禁じていた日本人が、実はそうではなかったことが、この甘酸っぱい追憶のフレーズに表されています。
第4部 歌い継ぎたい日本の歌 そのU
○北の国から…昭和56年からフジTVで放送されたドラマ「北の国から」の主題歌で、歌詞はありません。現在は、北海道を象徴する楽曲の様にバラエティ番組等で使われています。
○精霊流し…昭和49年、フォーク・ユニット「グレープ」が歌ったさだまさしの曲です。精霊流しは、長崎県の旧盆の伝統行事で、最近の一年間に亡くなった人の御霊を船に乗せて西方浄土に送るものです。
○心もよう…昭和48年の井上陽水のヒット曲です。昭和44年に「白い色は恋人の色」等をヒットさせたハワイ出身の女性デュオ、ベッツイ&クリスの為に「普通郵便」というタイトルをつけて作られましたが、彼女達本人の意向で採用されず、歌詞を作り直してアルバム「氷の世界」に収録されました。
○夢の中へ…昭和48年、井上陽水の初のヒット曲です。平成元年、斉藤由貴のカバーでもヒットしました。自身が「みんなで歌えるように作った」とコメントしている通り、明るく親しみ易い曲です。
合唱団コルス・フローレス
第14回定期演奏会 アナウンス原稿より
●無伴奏宗教曲
ご来場の皆様、本日はお忙しいなか、私たちコルスフローレスの第14回、定期演奏会においでいただき、ありがとうございます。最後までごゆっくりお楽しみください。
只今の第1部は、クリスマスを題材にした、2曲の無伴奏宗教曲をお聴きいただきました。
続いて、第2部に移らせていただきます。第2部は混声合唱組曲「光る砂漠」を歌います。
この曲は、7年前の第8回定期演奏会のとき、抜粋で演奏をしました。その感動をもう一度味わいたいという気持ちと、今度こそノーカットで全部を歌いたいという思いが、今回の再演につながりました。
作詞者の矢澤 宰(おさむ)は、昭和41年、21歳の若さで結核のためこの世を去りました。小学校2年生で腎結核と診断され、青春時代のほとんどを病院で過ごしました。そんな中、14歳から作詩を始めて、死ぬことと生きることをテーマに、ほとばしる感情を鮮烈な言葉に残しました。
組曲は病気との「再会」、つまり病気の再発から始まります。前半は、病院の窓から外を眺め、季節が移り変わっていくお話が続きます。組曲の中程は、死ぬことの恐怖におびえながら、キリストの待つ天国へ誘われる複雑な心境を、海、ほたる、落石などの情景にのせて語っていきます。終末は、病院で横たわる自分の体の中に流れる水が、ふるさとの山の渓流の水と同じであると考えるようになります。自分の中の水がふるさとの山の水とひとつになる。その瞬間は、命の光り輝く時。水がなくなった自分は砂漠、それでも美しく光り輝いています。
全曲を通して演奏いたします。それではごゆっくりお聴きください。
●「光る砂漠」
「歌い継ぎたい日本の歌 そのT」
●「朧月夜」
後半は、「歌い継ぎたい日本の歌」と題してお送りします。
春を感じさせる「朧月夜」に続いては、日本歌曲より「この道」と「からたちの花」をお届けします。北原白秋、山田耕筰の手によるこれらの2曲は、どちらも優しく流れる旋律そのままに、合唱曲にアレンジされています。
それでは、2曲続けてお聴きください。
●「この道」
●「からたちの花」
今回の定期演奏会の後半、「歌い継ぎたい日本の歌」のプログラムは、団員のアンケートを元に選曲されました。第3部は童謡唱歌を中心に、少し懐かしさを感じる曲が並んでいます。
続いては、初夏を感じさせる、これからの季節にぴったりの曲が並びました。
「夏は来ぬ」と「七夕さま」の2曲です。
●「夏は来ぬ」
●「七夕さま」
続いては、少し凝ったアレンジが楽しい3曲をお届けします。
たゆたうコーラスに、ピアノ伴奏の速い音が吹き抜けてゆく「風」。
「ずいずいずっころばし」は、カノンという技法が使われており、声の追いかけっこが不思議な響きを作ります。
そして「黄金虫」では、音の形が似ているという理由で、ダカン作曲の「ロンド」という曲が混ぜられており、ピアノ伴奏はまさにバロック音楽のようです。
3曲続けてお聴きください。
●「風」
●「ずいずいずっころばし」
●「黄金虫」
第3部の最後は、唱歌の傑作「ふるさと」です。
この曲を聴くと、誰もが自分の「ふるさと」の情景を思い浮かべることでしょう。
●「ふるさと」
ありがとうございました。ここで、第4部の演奏までの時間を使いまして、コルス・フローレスの活動などをご紹介したいと思います。
16年前に女声合唱団としてスタートしたコルスフローレスは11年前に混声合唱団となり、それ以来、織田先生の熱心なご指導により徐々に力をつけて参りました。
それとともに年々ステージにあがる機会が増え、その緊張感が私たちにとってよい励みとなっております。
昨年のコルスフローレスの活動について幾つかを紹介させていただきます。
ここ、かぶら文化ホールでは、7月にかぶらの里童謡祭、11月に警察音楽隊のコンサートに出演しました。
童謡祭では、富岡市で生まれた童謡を歌うことができました。
警察音楽隊のコンサートでは、富岡小学校と富岡東高校の合唱や、富岡市内各中学校吹奏楽部の皆さんが一緒に招かれ、吹奏楽と合唱の共演をいたしました。
このように私たちは、地域に根ざした活動を大切にしています。
訪問演奏は、甘楽町立新屋小学校にお招きいただきました。
演奏を真剣に聴いてくれ、話には元気に反応してくれ、大きな声で一緒に歌ってくれた児童の皆さんが、とても印象に残りました。
また、富岡製糸場の、世界遺産暫定リスト国内決定を記念して開かれた、市民コンサートにも参加しました。
練習場の甘楽幼稚園は富岡製糸場のごく近所であり、いつも煙突や煉瓦の壁を見ている製糸場の、繭倉庫で歌えたことは、良い経験になりました。
このような経験は、私たちにとって大きな励みとなり、より一層私たちの活動が充実していく力となります。ご要望がございましたら、是非お声をおかけいただければと思います。
またもし、合唱を聴くだけでなく「自分でも歌ってみたい」と思われる方がいらっしゃれば、コルスはいつでも新しいメンバーをお迎えする準備はできています。
「初めてだから」「やったことがないから」という方でもどうぞ一緒に参加してください。今日のステージを踏んでいるメンバーもその多くは、初めは全くの素人だったのです。大歓迎いたしますので、ご連絡を頂ければと思います。
わたしたちは、これからも多くの方々に喜んでいただけるような演奏を目指してがんばりたいとおもいます。
今後の目標は、2年ぶりのコンクール挑戦です。
これまでに6回、関東大会に挑戦しておりますが、行くたびに、全国大会レベルの合唱団の素晴らしい演奏を目の当たりにし、大いに感銘すると同時に、そのレベルの高さも実感しています。
今回も、前回以上の成績を獲得できるよう努力したいと思っています。
よりよい響きを目指すことが、合唱の楽しさにつながると信じ、技術と楽しさを兼ね備えた合唱団を目指していきたいと考えております。
そろそろ、準備もできたようです。それでは、第4部をはじめさせていただきます。第4部は、「歌い継ぎたい日本の歌 そのU」ということで、まずはさだまさしの曲からお届けします。
1曲目の「北の国から」は、1983年からフジテレビ系列で放映されたドラマの主題歌。
2曲目の「精霊流し」は、さだまさしの原点であった「グレープ」の代表作としてご存じの方も多いことと思います。
2曲続けて演奏いたします。
「歌い継ぎたい日本の歌 そのU」
●北の国から
●精霊流し
さて、コンサートもあと2曲を残すのみとなりました。
最後は井上陽水の曲をお聴き頂きます。
1曲目の「心もよう」は、井上陽水さんが当時の女性デュオ、ベッツイ&クリスに提供しようとした曲です。しかし、採用されずにお蔵入りになってしまい、歌詞を書き直して自身のアルバムの中で歌ったものです。
2曲目の「夢の中へ」は映画「放課後」の主題歌としてシングル・リリースされた曲です。メジャー・コードの傑作であり、陽水初のヒット曲となりました。のちにカバーされた、齋藤由貴さんの歌唱でもご存じの方がいらっしゃいますでしょうか。
それでは2曲続けて演奏いたします。
●心もよう
●夢の中へ
本日は、ありがとうございました。
さらなる練習を積んで、より素晴らしい演奏を目指していきたいと思いますので、またの機会にも、ぜひ出かけください。
お帰りの際は十分お気をつけてお帰りください。
なお、アンケートはロビーの係員にお渡しください。
本当にありがとうございました。