合唱団コルス・フローレス
第13回定期演奏会 プログラムノート

第1部 コルス・フローレス

混声合唱組曲「幼年連祷」

 新実徳英氏(1947-)は、東京大学工学部を卒業後、東京藝術大学音楽学部作曲科へ入りなおしたという、ちょっと変わった経歴を持つ作曲家です。
 特に合唱界においてその活躍は目覚しく、この幼年連祷は、30代初めに書かれた初期の代表作です。詩人である吉原幸子さん(1932-2002)の1964年に第4回室生犀星賞を受賞した第1詩集をテキストとしています。
 無邪気さ、純粋さ、かわいらしさ…皆さんの幼年時代にはどんな言葉が当てはまるでしょうか。大学卒業間近の吉原さんが、自分の幼い頃を振り返り、それを再体験し、それによって大人への1つの区切りをつけていく、そんな心情が言葉に表されています。
 皆さんが幼い頃の思い出を思い出すことができるような演奏ができればと思います。


第2部 合唱団葡萄 

現代無伴奏作品集
 現在、世界各国で活躍を続ける作曲家6人の代表曲をお送りいたします。バリエーションにとんだ各曲の、作曲家毎の作風の違いを楽しみながらお聞き下さい。

○Hodie Christus natus est  Niels la Cour (ニルス・ラ・クール) デンマーク 1944-
 美しい無伴奏宗教曲で知られる日本でも人気の作曲家。この曲もグレゴリオ聖歌の旋律をベースに効果的に和声付けされた静かな美しい人気曲。当団でも愛唱曲の一つになっています。

○When I sing …  Vytautas Miskinis (ヴィタータス・ミスキニス) リトアニア 1954-
 広くヨーロッパ各国でも人気を集めているリトアニアを代表する作曲家であると同時に、指揮者・全リトアニア合唱祭の芸術監督など多方面で活躍しています。インドの詩聖タゴールの詩をテキストとしたこの曲は、現代感覚に溢れつつそれでいてさわやかな作風を持つ彼ならではの作品に仕上がっています。

○El Hambo  Jaakko Mantyjarvi (ヤーコ・マンチュヤルヴィ) フィンランド 1963-
 失われ行く少数民族やその民謡に光をあてようというシリーズ"Justly Forgotten Peoples"として作曲された2曲目で、スウェーデン民謡やノルウェー民謡を素材としています。Hamboとはスウェーデン民謡での3/4拍子のことで、El Hamboは「electric hambo」の意味で、非常にリズミカルな曲です。

○Alleluia  Urmas Sisask (ウルマス・シサスク) エストニア 1960-
 シサスクは天体に傾倒していて、太陽系の惑星の軌道計算から#ド・レ・#ファ・#ソ・ラの5つの音から成る「天体の音階」を編み出しました。本日の曲にも用いられている、この音階は、偶然にも日本の音階と同じものであり、神秘的かつ古風な作風をもたらしています。

○赤とんぼ  信長貴富 日本 1971-
 楽譜出版社で働くかたわら、アマチュア合唱団で活動しながら作曲も行っていた日曜作曲家であったが、その才能を買われ、現在は作曲活動に専念している話題の若手作曲家。『ノスタルジア』・・・その名のとおりの懐かしい香りの中に、歌い手の心をくすぐる新鮮な風を感じるアレンジに仕上がっているのは、彼自身が熱心な合唱演奏家であったためでしょうか?

○Sing a song of sixpence  John Rutter (ジョン・ラッター) イギリス 1945-
 プロの室内合唱団「ケンブリッジ・シンガーズ」を組織し、指揮者としても活躍する、現代イギリスを代表する作曲家。この曲集は彼が子供のころから親しんだ詩に親しみやすい音楽がつけられた作品で、中でも終曲となるこの曲は、作曲者自身「からかい半分の作風に仕上げた」と言っているとても楽しい作品となっています。


第3部 合同演奏

レクイエム 作品48(G.フォーレ)

 ガブリエル・フォーレ(1845-1924)は、フランス南部のパミエに生まれ、パリの宗教音楽学校でサン=サーンス等に学びました。
 各地の教会でオルガニストを歴任し、パリ音楽院の院長も務めました。
 しなやかな抒情性と優れた平衡感覚は、ドビュッシー、ラヴェル等印象派への橋渡しといえる存在であり、19世紀と20世紀をつなぐ役割を果たしました。
 「レクィエム」の他に代表曲として、「ペレアスとメリザンド」「月の光」「優しい歌」「ペネロープ」等があります。

 レクィエムは1887年から作曲が始められ、1888年1月16日、マドレーヌ寺院において、建築家ルスファシェの葬儀に際してフォーレ自身の指揮によって初演されました。
 このときは、「入祭唱とキリエ」、「サンクトゥス」、「ピエ・イェズ」、「アニュス・デイ」、「天国にて」の5曲構成でした。
 こののちもフォーレはこの曲に手を入れ、1892年1月28日、国民音楽教会の演奏会では、「奉献唱」と「リベラ・メ」の2曲が付加されて7曲構成となりました。

 T 入祭唱とキリエ…オーケストラのユニゾンによる重々しい主音で始まります。キリエではやや律動的になります。
 U 奉献唱…オ・ドミネの部分はカノン風です。中間部はバリトン独唱によるホスティアスとなります。同音反復による朗唱が特徴的です。清澄なアーメンコーラスで締めくくられます。
 V サンクトゥス…弦とハープの分散和音、ヴァイオリンのオブリガートに伴われ、ソプラノとテノールが互いに歌い交わしながら感動的なオザンナの部分に達します。
 W ピエ・イェズ…ソプラノ独唱です。オーケストラは独唱の余韻のように寄り添います。
 X アニュス・デイ…弦による優雅な主題に乗ってテノールが歌います。中間部では聖体拝領唱(Communio)からLux aeternaの部分が挿入され、幻惑的な転調をみせます。クライマックスに達すると、第1曲「入祭唱」の冒頭部分が再現されます。
 Y リベラ・メ…この曲と第7曲「天国にて」は、本来のミサに入っておらず、ミサ終了後の祈りの歌が採られています。低弦のピチカートが特徴的なオスティナートリズムの上にバリトン独唱が歌います。中間部にはいると劇的になり、Dies irae,dies illaでは激しく歌われます。初めの部分に戻って、合唱がユニゾンで幅広く歌う部分は印象的です。
 Z 天国にて…本来の死者ミサの一部ではなく、棺を埋葬する時に用いられる祈祷文に作曲したものです。オルガンの浮遊感をたたえた音型に乗ってソプラノが歌います。

 フォーレのレクィエムは当時のカトリックの死者ミサの形式では必須であった「怒りの日」などを欠くなど、そのままではミサに用いることの出来ない形式をとっています。その為、当時から「死の恐ろしさが表現されていない」「異教徒的」などとの批判が出されました。
 これに対してフォーレは1902年に「私のレクィエム……は、死に対する恐怖感を表現していないと言われており、なかにはこの曲を死の子守歌と呼んだ人もいます。
 しかし、私には、死はそのように感じられるのであり、それは苦しみというより、むしろ永遠の至福の喜びに満ちた開放感に他なりません。」

 魂を慰め、天上界を暗示するこの世のものと思えない美しさに溢れた「レクィエム」をお聞きください。


合唱団葡萄 プロフィール
 1994年に結成、高崎市を中心に活動している混声合唱団。群馬県内在住の団員中心に20数名で構成。
 アカペラを中心とした合唱曲に取り組む一方で、群馬オペラ協会に協力してオペラの合唱にも取り組む。
 今年はジョイントコンサートの他に、12月17日(日)に玉村にしきのホールで第6回コンサートを行う。
指揮者     八木 淳一
 1970年生まれ。中学校時代から合唱を始め、故関屋晋氏のもとで歌い、学生指揮も経験した大学時代に、より合唱音楽へと傾倒することになった。
 卒業後、群馬に就職し合唱団葡萄に入団、2000年からは指揮者として指導にあたっている。
 特に好きな音楽の分野は、古楽・近現代の無伴奏合唱曲で、葡萄の選曲に無伴奏曲が多いのは彼の影響といえるでしょう。 


合唱団葡萄HPへのリンクはこちら。


カメラータ ジオン(camerata jion) プロフィール

 2003年に結成された室内管弦楽団。カメラータ ジオンとは「音を慈しむ仲間たち(慈音)」という意味を持つ。
 群馬に本拠地を置き、関東一円の演奏家が、群馬出身の指揮者田部井剛を中心に活動。
 これまでに日本最高齢の現役チェリストである青木十良、フランスのピアノの巨匠エリック・ハイドシェック等とも共演。
 チームワークの良さとあたたかな響きに、また特にモーツァルトの演奏には高い評価を得ている。モーツァルトシリーズのコンサートを群馬でも開催予定。

指揮者 田部井 剛

 群馬県板倉町出身。太田高校、早稲田大学商学部卒業後、東京音楽大学指揮科研究生修了、東京藝術大学指揮科卒業。
 これまでに指揮法を遠藤雅古、佐藤功太郎、ジェームズ・ロックハート、広上淳一、三石精一の各氏に師事。
 97年、沖縄国際音楽祭出演。
 99年5月、日本フィルハーモニー交響楽団を指揮し、マルセル・デラノワ作曲「5月の協奏曲」をエリック・ハイドシェックと共演、氏より“ヤング・トスカニーニ”との賞賛を受ける。
 2002年には新日本フィルハーモニーを指揮し再びハイドシェックと共演、高い評価を得た。
 2003年来、カメラータ ジオンを指揮し、川畠成道、青木十良、エリック・ハイドシェック夫婦と共演、好評を博す。
 国内の多くのオーケストラから招かれ、指揮活動を行っている。また、平松英子、寺谷千枝子の伴奏や、室内楽のピアノ奏者としても演奏活動をしている。

ソプラノ 鷹野 恵

 武蔵野音楽大学声楽科卒業。卒業演奏会に出演。
 第11回ぐんま新人演奏会出演。草津夏期国際アカデミーに県派遣員としてE.ヘフリガー、E.マティス各氏に師事。
 第10回友愛ドイツリートコンクールにて第3位入賞。これによりウィーン夏期ゼミナールに奨学生として派遣され現地にてディヒラーコンクール第3位入賞。
 その後シューベルトインスティテュート(オーストリア、バーデン市)にてドイツリートマスタークラス終了。
 第9回梅の里音楽祭日本の歌セミナーにて奨励賞を受賞。
 第16回奏楽堂日本歌曲コンクールにて奨励賞を受賞する。
 ドイツリート、日本歌曲などのリサイタルを行っている。沼田市女声合唱団のばら会ボイストレーナー。高崎演奏家協会、群馬音楽協会会員。

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